「郵政事業の経営改善に向けて」(2017年2月17日)

 急速に高齢化が進む中、神戸市も2025年にいわゆる「団塊の世代」が全て75歳以上となる「超高齢社会」を迎えます。過疎化・高齢化が進む地域においては、郵便局が郵政事業のみならず、見守りなどの「安心」、防災などの「安全」、コミュニティ活動などの「交流」の地域拠点として機能している現状を、無視してはなりません。しかし分社化後、特に過疎地域における郵便局の経営が脅かされています。
 
 日本郵政グループは平成19年に民営化されて以降、他社にはない過度な規制が掛けられており、平成24年の改正郵政民営化法により、金融ユニバーサルサービスの義務等が更に課せられることになりました。他方、税、預金保険料、生命保険契約者保護機構負担金などは一切の考慮が無いまま他社と同様の負担を強いられています。この現状は日本郵政グループ各社の成長にとって大きな阻害要因ともなっています。
 
 2015年6月、ゆうちょについては限度額1000万円から1300万円に。かんぽ生命については、現行の通計制度 による上乗せ額300万円を1000万円に引き上げることとなりました。実に四半世紀ぶりのことではありましたが、1300万円を定期預金で預けても、金利は1300円程度に過ぎません。どうして、限度額を抑える必要があったのかが疑問です。金融機関が郵便局しかないという自治体は、全国で24町村存在します。消費者利便の向上に繋がる政策判断が必要でしょう。
 
 また更なる規制緩和も必要です。「ローンや相続相談など一般の金融機関並みのサービスの提供」、「民営化前のような外務員による金融サービスの展開」、「ATMの相互乗り入れや地域ファンドの創設など地域金融機関との協力関係の構築」、「自治体業務の一部の代替提供」などについて、早期に開放するよう検討を進めることが必要です。
 
 他の金融機関からイコールフッティングを求める声もありますが、2007年下期以降、法人三税は3兆円弱を負担しており、他の金融機関と同等の租税負担をしています。週6日、原則1日1回、全国どこでも同一料金で郵便を配達するというユニバーサルサービスが法律で義務付けられており、このユニバーサルサービスの維持コストは、2013年にはおよそ2631億円にも及ぶと試算されています。にもかかわらず限度額などにおいて規制を受けており、逆に不公平な扱いを受けている現状でもあります。
 
 日本郵政グループ3社は2015年11月に東京証券取引所に同時上場を果たし、1年3ヶ月が経過しました。その目的は、自由な意志による経営の下に一層の企業価値を高め、市場からの評価を受け、民営化による果実をすべての国民が享受できるようにすることでしたし、日本郵政株式会社の株式売却収入は東日本大震災の復興財源に充てられました。しかし今回の上場を機に、ゆうちょとかんぽの民営化が進み、資本関係が薄れていけば、手数料収入も危うくなる可能性もあります。手数料の低減は、郵便局の経営を直撃します。郵便局がどのように経営を維持し、どう稼ぐべきか、という術をもっと考えなければなりません。この稼ぐ術は、民営化を推し進めた政治も、責任をもって考えていかなければならないと思います。
 
 また、日本郵便株式会社は、ゆうちょ・かんぽから業務委託を受けて、銀行窓口業務、保険窓口業務を提供するスキームとなっています。この業務委託は、窓口業務を一体で行なう普通の金融機関では当然生じないため、消費税もかかりません。しかし、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険は分社化後、日本郵便に対し手数料を年間約1兆円程度払っています。それにかかる消費税は毎年800億円にも及びます。消費税が10%に引き上げられると1,000億円になります。内部取引であれば非課税だったものが、国の政策により分社化したことにより発生した負担です。本来は減免すべきでしょう。このように競争上著しく不公平な状況を放置すれば、やがて三社の連携は弱体化し、結果、金融のユニバーサルサービスの提供に支障が生じることになります。この消費税負担問題は積年の課題ですが、平成29年度税制大綱においても、残念ながら「引き続き所要の検討を行う」という記載で終わりました。来年以降も引き続き声を上げて行かなければなりません。
 
 郵便局は、郵便・貯金・保険などの3つのサービスを提供するだけではなく、「市民生活の一部のような存在」として国民の暮らしに溶けこみ、地域の人々の助け合いや憩いの場としての役割も果たしています。このため、郵便局では日頃から地域社会とのつながりを深めており、各郵便局ではさまざまな形で地域の活動に参加しています。特に、郵便局長はその牽引役として、より地域に根ざした活動に取り組んでいることに、改めて敬意を表さなければなりません。
 
 郵政、郵貯、簡保は日本国民にとって最も歴史的になじみの深い、最も信頼されている事業です。今後もしっかりと政治の場で、議論を注視して参りたいと思います。